経済的逆境と、逆転的発想、そして・・・

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 私が、この男の下に弟子入りを申し込んだとき、すでに特務機関の存在意義は薄れつつあった。

 発足当初こそ、元老院並びに国王の密命を受けていたとは言え、彼には忠誠や信仰といった言葉とは無縁である。自分に対する保険とばかりに、元老院側の醜聞や王宮内部のスキャンダルも、同時進行で捜査していったのである。
 対立する両者の間を、情報を武器に立ち回っていた。
 双方に有益な情報を流しつつ、弱みを握るというやり方で。

 たちの悪い二重スパイを、あからさまに演じていたのだが、己の身を守りつつ任務を遂行するために、やむをえない選択だったともいえる。そしてその結果、国王や両院の思惑を超えて、歴史的な和解を達成してしまったのである。

 しかし、これは言い換えれば砂上の楼閣。
 今後もしっかりとした情報収集を行い、つねに両院や王宮の監視を続けなければ、いつまた破綻を来たすとも分からない。
 そのためにも、組織の維持は必要条件である。

 だが、問題は維持費である。

 私が湯水の如く使う消耗品に加えて、装備品への投資が必要不可欠であった。
・・・・・・そんな余裕は、既に無かったのである。
 お互い、経済感覚は鈍かった。

 そんな時だ、遥か東方の異邦人、奇妙な商人が現われたのは。
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赤傷薬は~
 いかがでござるか~
正規品がなんと~
 2割引でござるよ~
加速剤に蝿の羽も~
 あるでござるよ~


 気の抜けるような声で道具を売り歩くその男の名は、備中長船といった。長船一門といえば、天津では名のある職人集団である。何でも、免許は受けたものの、大陸の刀剣に興味を引かれ、単身渡来したのだという。

 しかし、でござる。
 この国では、
  自分で作った武器は
   自分で売らなければならないでござる。
 商売の基本を学ばなければ、
  工房を持つことすら出来ないのでござるよ。
   不思議な国でござるよ、にんにん。



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 昔は、黄金の国と言われ、
   そこに住む原住民はゴジャール族と呼ばれていた。
 今は、国同士の交易が開かれ、
   交流も深まってきてはいるが、
  実際に天津人を見るのは初めてだった。
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 この出会いが、師リチャード・ベントラーの転機となった。

 調査機関としてさまざまな組織の間を渡り歩く我々が、クルセイダーである必然性が無いことに、この時ようやく気がついたのである。
 組織としての影響力、独自性と独立性を強く保持するに至った今、更なる飛躍と利便性を求め、師リチャード・ベントラーはロザリーを外し、私に留守を託して消えていった・・・

 そして数日後、
 元老院特務観察室長、
   リチャード・ベントラー大佐は、
 退役十字軍元大佐・商人、
   リチャード・ベントラーとなって帰ってきたのである。
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 もっとも、冒険者の宿・ベントラー亭の開業は、
     まだまだ先の話であるが。
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# by fellmer_folkgein | 2005-12-18 19:04 | 王国正史・フェルマー伝

元老院特務監察室の誕生

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 この人の活躍ぶり、そして人柄を語るには、当時の世相を解説しておかねばなるまい。

 あの頃、神学協会は2派に分かれて論争を繰り広げていた。
 

  元老院派と、枢機院派である。

神学協会の決定に逆らうことは、
たとえ国王といえど破門の憂き目に会う。
協会トップの権威は絶大であり、
教皇とは神の意思を持つ者のことなのである。



 両院の論争の、最も大きなテーマとなったのが、北の共和国の教化・改宗問題であった。
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 情報の不足により手出しは無用とする元老院に対し、神の教えを唯一絶対とする枢機院は、共和国即時侵攻を訴えていた。
 次々と飛び出す未確認情報、ネガティブな両院の内部情報・告発、そしてスキャンダルなど、論争は泥沼化の一途をたどっていた。

 そして、困ったことに当時の教皇は、枢機院派から選出された人物であった。

 このままでは、教皇の決定によりシュバルツバルド共和国侵攻が規定路線となってしまう。それだけは避けなければならない。元老院派と国王トリスタン3世の思惑が一致した。

 このような経緯で誕生した情報機関、それが元老院特務監察室だ。

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 初代室長には、隠密行動が得意で単独行動を好み、出自に関して謎の多いクルセイダーが適任とされた。リチャード・ベントラーとは、このために生まれてきたようなものだった。


 その任務は多岐に渡っていた。



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共和国の
 情報収集、
枢機院の
 内部調査、

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監察官の
増員育成、

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 さらに監察室の資金調達まで自前で行わなければならなかった。
 無位無官の秘密組織であるため、予算は下りないのでる。

 国王及び元老院の密命、
  それだけがこの組織の後ろ盾であった。


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# by fellmer_folkgein | 2005-12-11 13:01 | 王国正史・フェルマー伝

リチャード・ベントラー その苛烈なる人生の幕開け

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 私の自伝を書くに当たって、この人の伝は、絶対に外せない要素である。私はフォルクゲイン一門の異端児であるが、この人は、まさに十字軍の異端児であった。

 その出自には、謎が多い。
 王侯貴族であれば当然だが、市民でも出生の記録は残っているものだ。しかし、この人にはそれが無い。わけあって記録には残せない御身分のお方であれば、噂話の一つも流れて来るものだが、あいにくと、後宮の御婦人方が喜びそうな逸話の一つも無い。

 出身はモロク。
 それ以外の過去は、あまり話したがらないお人であったことから、最底辺の、それも貧民窟の流民出身である可能性が高い。
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 私の転職の際、試験官にこの人の話を聞くことが出来た。我が父に、この人を推薦したのも、このときの試験官その人であったという。
 こいつ、本当に十字軍の試験を受ける気なのか?というような格好だったよ。
 装備は使い込みすぎてボロボロ、武器以外はほぼ手ぶらで、回復材すら用意できないほど金に困っていたと見えたね。
 でもな、好い目をしていたのだよ。目つきは、そう、怖いくらいに鋭いんだが、なんというか、希望の光を宿していたと言えばいいのだろうか・・・。
 ・・・こやつ、只者ではない。そう思わせる何かがあったのだよ。

 まあ、結果は言わんでも分かるだろう。
 仮に、オリデオコン製の武器や精錬された防具が揃っていても、回復材無しではなかなか合格は出来ん試験だ。その全てを持っていない彼に、合格できる要素は無かったのだよ。
 だが、ここで彼の可能性の芽を摘んでしまっては、私の人生の全てが否定されてしまう。そう思ったんだろうな、その時は。
 再試験を受けに来た彼に、合格を告げ、マスタークルセイダーさま宛の推挙状を手渡したのだよ。
 その後の彼の言動や素行を聞くに及んで、激しく後悔したものだがな・・・ハッハッハ

 わが師、リチャード・ベントラーは、神を信ぜず、王を敬わぬ、不敬不遜の問題児でもあったのだ。
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 教会の支援を好まず、遠征にも参加せず、無頼の仲間と戦場を駆け回る日々を過ごしていたのだという。
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# by fellmer_folkgein | 2005-12-01 21:16 | 王国正史・フェルマー伝