ミョルニール炭鉱、その閉山の真相に迫る!

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諸君!
これは聖戦だ!!
我らが守るべき市民のために、
そして王国を勝利のために
成すべきことは、
最前線で戦う兵達から、
後顧の憂いを無くすことにある!
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それが、
我々情報将校に課せられた使命である!

強大な力を持つ貴族、高官、将軍であろうと恐れる必要は無い!
どんなに小さな犯罪の芽も見逃すな!
手段は選ばずとも良い!
歴史の必然が、
我々の行いを正当化するであろう!!



パチパチパチ・・・
乾いた拍手の音が、寂しい宿屋で虚しく響く。
「やっぱこういう演説は、お前がやるとサマになる」
「せっかくのほめ言葉ですが、これはあなたの役目なのではないかと」
廃坑探索を開始して早3ヶ月、我々は予想を超えた成果を挙げ、そしてその結果に落胆していた。
「俺らがこうして監察してるという事実、それ自体が汚職への抑止力になるんだ。そう腐るなって」
師・ベントラーの前向きな言葉も、そのときの私には詭弁にしか聞こえなかった。
いったいそこには、何が眠っていたのか。
いったいそこで、何が起こったのか。





それは、炭鉱の採掘量がピークに達したころの、
暑い、暑い夏のことだった。

ミョルニール山脈を国境とする北側の共和国、シュバルツバルドより一通の親書が届いたという。
「貴国の開発する鉱山の一つが、わが共和国の国境を地下から侵犯しているとの報告を受けた。この事実に対する説明を求む」

 金属・燃料資源の確保のための鉱山開発は、私の祖父に当たる第六代当主ニールス・フォルクゲインが提唱したものだ。
 隣国の軍備増強を見越し、王国正規軍の装備を充実させるため。というのが狙いであった。
 しかし、一千年もの平和を享受した王国首脳部を動かすには、世代を一つ跨ぐほどの時間が必要であった。
 開発に着手するに当たり、その責任者に任ぜられたのがわが父、アドルフ・フォルクゲインでである。
 それを後押しをしたのは、共和国の軍事的脅威である。当時、共和国の新兵器のうわさが飛び交っていたのだ。


 なんのことは無い。蓋を開けてみれば、事実無根のブラフであった。しかし、親書を突きつけられた当時は、蜂の巣を突いたような騒ぎになったという。
 王国正規軍は、外交上の屈辱を受けたとして開戦を主張。軍務大臣は主戦派の抑え込みに奔走。議会は軍事関係者不在のまま、戦争の脅威に半ば屈服しそうになっていた。
 迷走する王国に対し、共和国も戦争の準備を進めつつ、さまざまな手を打ってきた。
 賠償金の要求、
 鉱山採掘料の請求、
 領土割譲や交換を強訴、
 さらに、王国の軍備抑制や貿易・関税に関する不利な条約の締結を迫ってきた。 

 王国は、建国以来最大の危機に陥っていた。


 しかし、自体は急転直下、収束に向かっていった。
 落盤事故により、採掘が不能になったのだ。

 炭鉱はこのまま閉山とし、
  事故原因の調査のために両国の冒険者の出入りを自由とする。
   王国に対する要求は、すべて無期限の保留とする。

 こうして、両国は臨戦態勢を解除した。
 未曾有の緊張に不釣合いなほど、あっけない幕切れであった。

 問題は、 鉱夫や技術者、さらに現場の責任者までが生き埋めになるという大惨事・・・これが果たして、本当に事故だったのかどうか。人為的に引き起こされた事件だったのではないか。ということにある。
 しかも、事態の収拾を図るために、破壊工作を行ったのはわが父、アドルフだったのではないか。

 皮肉にも、その証拠を見つけたのは
 息子であるこの私だったのだ。


「当代を生きる俺達が評価を下していいような事件じゃねぇ。幾つかの正義が真っ向からぶつかり合った結果の、悲しくも最善の選択だったと思いねぇ。第一、この件で断罪されるべきは、軍備と情報収集を怠った大臣連中の方だろう。」

 室長のこの言葉に、私は憤りつつも、彼の下した結論を受け入れるしかなかった。
 父の行った非道な犯罪行為は、結果として国を救った。あとは、後世の歴史家がどのように書き記すのか、であるが・・・

まあ、そんなことはいま考えても意味はないだろう。


 その後、我々は廃坑巡回を通常業務として行うことになった。
 最深部に眠る証拠物件の保存のために、
 汚職犯罪の抑止のために。
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by fellmer_folkgein | 2006-01-22 13:27 | 王国正史・フェルマー伝
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