この人の活躍ぶり、そして人柄を語るには、当時の世相を解説しておかねばなるまい。 あの頃、神学協会は2派に分かれて論争を繰り広げていた。 元老院派と、枢機院派である。 神学協会の決定に逆らうことは、 たとえ国王といえど破門の憂き目に会う。 協会トップの権威は絶大であり、 教皇とは神の意思を持つ者のことなのである。 両院の論争の、最も大きなテーマとなったのが、北の共和国の教化・改宗問題であった。 情報の不足により手出しは無用とする元老院に対し、神の教えを唯一絶対とする枢機院は、共和国即時侵攻を訴えていた。 次々と飛び出す未確認情報、ネガティブな両院の内部情報・告発、そしてスキャンダルなど、論争は泥沼化の一途をたどっていた。 そして、困ったことに当時の教皇は、枢機院派から選出された人物であった。 このままでは、教皇の決定によりシュバルツバルド共和国侵攻が規定路線となってしまう。それだけは避けなければならない。元老院派と国王トリスタン3世の思惑が一致した。 このような経緯で誕生した情報機関、それが元老院特務監察室だ。 初代室長には、隠密行動が得意で単独行動を好み、出自に関して謎の多いクルセイダーが適任とされた。リチャード・ベントラーとは、このために生まれてきたようなものだった。 その任務は多岐に渡っていた。 共和国の 情報収集、 枢機院の 内部調査、 監察官の 増員育成、 さらに監察室の資金調達まで自前で行わなければならなかった。 無位無官の秘密組織であるため、予算は下りないのでる。 国王及び元老院の密命、 それだけがこの組織の後ろ盾であった。
by fellmer_folkgein
| 2005-12-11 13:01
| 王国正史・フェルマー伝
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