蒼天に我が道を問う

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 武門としての地位と名誉は、我が一門の今後に必要なものだ。しかし、それを理解しようとしない父上との溝は、日増しに深まっていったように思えた。大好きな狩りでも心定まらず、つい居眠りをしてしまうほどだ。

 そして、運命の前日。

 冬の空は高く、澄んでいた。
  虚も実も無い天空、
   生も死も無き世界。
    我が問いに答えるは、神か悪魔か
     人間か。

 決して優れた詩才とは言えぬ私にまで、詩想をふくらませてくれた蒼天を見上げ、いつしか、自分がちっぽけな存在であることに気がついた。
 人は、簡単に死ぬ。だが、死に難い世の中を作ることは可能であるはず。手段と思想の違いはあれど、考えていることは父と同じはずだ。
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「父上、武将としての教育を受けてこなかった私が、兵卒から這い上がるには、この体に流れる文官の血をすべて流し去らなければなりません。死地という死地を駆け巡り、戦功を上げるまでは、決して生きては帰らぬという覚悟が必要です」
 大きく頷く7代当主。だから止めておけと言いたいのだろうが、私の答えは既に出ている。
「当家の支援を受けられぬとあらば、私は家を出るより他ありません。そして・・・」
 と、私の言葉をさえぎる父。懐から一枚の紙切れを取り出し、手渡した。そこには、二人の名前が記されていた。
「お前が実技試験を通るとも思えないのでな、試験官を丸め込んでおいた。上の名が当日居眠りをする教官だ」
 迂闊にも、私は試験というものがあるのを忘れていた。さらに、
「無事、試験が終わったら、下の名を訪ねて行くといい。幾多の死線をかいくぐってきた男だ」
 その名はリチャード・ベントラー。十字軍制度始まって以来の問題児と言われる男だ。
「そっちには話を通していない。弟子にしてもらえるかどうかはお前次第だ。報酬も、出世払いでお前が払え」
 ライオンは、生まれたばかりの我が子を千尋の谷に突き落とすという。そう、私には手厚い保護より手強い試練こそが必要なのだ。そのことは、次の言葉に良く表れている。
「本日を以って、お前は死んだものと見て、今後当家を運営していく。フェルマーよ、フォルクゲイン家の門は、二度とくぐらぬつもりで往くが良い!」
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by fellmer_folkgein | 2005-11-06 09:48 | 王国正史・フェルマー伝
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